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zoom RSS 『近代文学の風景』/西垣勤/績文堂/「時代と文学の軋みを作家たちは・・・」

<<   作成日時 : 2005/10/08 05:45   >>

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 近代文学の中から、「有島武郎」「夏目漱石」「石川啄木」の作品と思想を探り、第4編「大正昭和の作家」では、芥川龍之介、宮本百合子、小林多喜二、大岡昇平、住井すゑの文学と生き方に迫っている。

 有島武郎は「留学以前には、キリスト教徒としての立場から、というよりよりその立場を深めるところから、社会の矛盾、国家の問題に対して、インターナショナルな社会の矛盾への眼、社会主義に近い思想を獲得し始めている」と作者は分析する。
 有島に影響を与えた思想家、文学者として「トルストイ、クロポトキン、ホイットマン、イプセン、ゴーリキー」をあげ、ゴーリキーの影響をその作品から分析している。
 ゴーリキーの影響は、石川啄木や志賀直哉にも及んでおり、これらの論稿は興味深いものがある。

 石川啄木におけるゴーリキーの影響を取り上げた内容は優れており、これまで私が感じていた啄木とは違う啄木像がうが浮かび上がってきた。

 夏目漱石については「こころ」の分析が最高に読み応えがあり、小森陽一氏の読み方に疑問符をなげる分析には俄然興味がそそられた。

 最も興味深く読んだのは、宮本百合子論と小林多喜二論。戦後一年後に創刊された『近代文学』を、作者は「文学史上良くも悪しくもこの時期以後重要な役割を果たした雑誌」と評してしますが、この雑誌が企画した座談会での話が紹介されている。

 座談会の席上、本多秋五は「昭和十年代を生きた左翼文学者で、宮本百合子を正面から見ることの出来る人はいないのではないか」と発言。中野重治をはじめほとんどの作家が戦中に転向したことに対する発言である。

 それほど、ほとんどの文学者が戦中に国家権力に屈したという事実が如実に語られてい。小林多喜二は、地下活動の末にスパイによって捕らえられ、捉えられた日に虐殺されたことは有名である。だからこそ、宮本百合子を前にしての発言が前述のとおりとなったのである。
 歴史の皮肉は、戦中に転向し、戦後過ちを認めて新たな決意で文筆活動を始めた多くの文学者が、再びその活動から退き、非転向を貫いた人々に悪罵を投げつけたことである。
 『近代文学』は、その悪罵を投げるける先陣となった。そして、いまでは『近代文学』の組織そのものが消滅している。

 「小林多喜二」の論稿には、多喜二の愛と不屈の精神が簡潔に述べられている。仮に多喜二が生きていたとしたら、多喜二はけっして転向することはなかっただろう、というのが作者の認識である。多喜二の不屈さは、知識からだけではなく、身体の中からのものであるという分析に同感する。

 多くの文学者が、近代という時代をどう受け止め、どう文学に著していったかの分析は優れたものであった。作者には、そういった視点からの著作をもっと書いて欲しいと思う。

2004-07-18

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