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zoom RSS 『北の碑』稲沢潤子

<<   作成日時 : 2005/08/18 05:03   >>

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 下山、三鷹、松川事件に関心を持ち、最近数冊の本を読んだ。松川事件を題材にした小説があると知り、さっそく手にした。

 被告達は、なぜ嘘の自白をしたのか。警察は、無実を知りながら被告達を罪に陥れようとしたのではないか。松川事件にはいくつものなぞがある。

 この小説は、女性被告をモデルに、嘘の自白調書に署名するまでの心理を巧みに描いている。こんな状態の中で、正常な心理状態を維持することは難しいだろう、と考えさせられる。
 多くの冤罪事件で、自白の信憑性が問われてきたが、本事件でも嘘の自白が強要された。警察は、一度犯人と決め付けてしまうと、真実を追究するのではなく、いかに犯人に仕立て上げるかに躍起となる。そんな冤罪事件は過去にいくつもあったことを思い起こした。

 作者の意図は、松川事件を通じて、女性被告の成長を描こうとしているように思われる。事件を知り、逮捕され、保釈後無実を訴えて無罪になるまでに、いくたの経験をし成長していく。

 しかし、現実の事件を題材にしているのに、松川事件の背景等があまり見えてこない。また、当初は無罪を信じる人が少なく困難な状況であったのが、徐々に無実を信じる人が増え、それが大きな運動になったあたりの描写が省略されているように思われる。

 人間は人と人との交流によって変化するが、その交流は個別的な交流だけではないと思う。時には社会的な世論の流れの中でも変化することがある。とりわけ、こんな重大事件の被告には、そんな関係が多々あったのではなかろうか。
 女性被告の心理状態を描くことには成功しているのに、少し物足りない感じがするのは、そんな社会的な視点の描写が少し不足気味だからかもしれないと感じる。

 それにしても、権力によるでっち上げに、あらためて怒りを感じた。

2004-04-24

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