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zoom RSS 『靖国問題』/高橋 哲哉/筑摩書房/「なぜ靖国参拝が問題になるのかをズバリと指摘」

<<   作成日時 : 2005/06/28 05:08   >>

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 なぜ、首相の靖国参拝がこれほど国内外の大問題になるのか。その根本的な問題がどこにあるかを論理的に解明する本書は、時期的にも内容的にも意義深いものがある。

 著者は、「靖国神社がどのようなものであるのかを知らなければ、首相の参拝がなぜ問題になるのかは理解できない。参拝がなぜ問題になるのかを理解できなければ、それに対する自分の意見を持つこともできない」という視点から、靖国問題を論じている。

 最初に感心したのは、「靖国神社とは」から始めるのではなく、遺族や被害者の「感情問題」から論じていることである。
 「靖国問題を難しくしている最大の要因のひとつは、明らかに『感情』の問題にある。とりわけその中心には『遺族感情』の問題がある」として、「遺族感情」を論じている。そして、この「遺族感情」には「首相の参拝によって、深く傷つけられた日本人遺族も存在する」と、「遺族感情」がひとつではないことを明らかにしている。なぜ、そのような両極の感情があるのだろうか。

 「靖国の論理は戦死を悲しむことを本質とするのではなく、その悲しみを正反対の喜びに転換させようとする」レトリックがあるからである。
 そもそも、戦前の靖国神社は「『お国のために死ぬこと』を名誉と考え、進んでみずからを犠牲にする兵士の精神を調達するため」の役割を担っていた。だから、戦没者の「追悼」ではなく「英霊」としての「顕彰」が必要であった。ちなみに「顕彰」とは、戦争行為そのものを褒め称えることである。

 では靖国神社は、日本が起こした戦争に対し、どう考えているのか。『靖国神社忠魂史』では、「日中戦争とアジア太平洋戦争以前の日本の無数の戦争の歴史が、それらすべて『聖戦』」と記述され、「植民地獲得と抵抗運動弾圧のための日本軍の戦争が、すべて正義の戦争として記述されている」と著者はいう。
 『靖国神社忠魂史』の一部を引用すると、台湾で、「わが領土たるを欲しない多くの住民は、各処に徒党を組み、二三督撫の後援を期して共和国を建設するに決し」「台湾沖でこの情況を聴くに及び断乎武力を以って任務を果たすべく決意」したとある。台湾を植民地にしようとしたが抵抗したので戦闘を開始したという論理である。これが、どうして「正義の戦争」なのか。

 そして、「靖国神社はいまなお、かつての日本の戦争と植民地支配がすべて正しかったという歴史観に立っている」。靖国神社を参拝することは、このような靖国史観を肯定することに繋がるのは明らかである。ここが最大の問題なのである。

 小泉首相は、この靖国史観と政府見解は違うと国会で答弁した。ならば、参拝は止めるべきである。首相がいくら「追悼」という「感情問題」を言っても、靖国神社自身が認めていない論理とは相容れないではないか。
 相容れない靖国神社を参拝する「政治的意思」こそが問題であり、この政治的意思を変えない限り靖国問題は解決しないと著者は力強く項主張する。「靖国問題」を考える手引きとしてぜひ読んでほしい。

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