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zoom RSS 『防雪林・不在地主』 島村輝氏解説

<<   作成日時 : 2010/04/27 21:25   >>

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 いやー、今日は嬉しい雨です。肩こりがひどくてしんどかったのですが、18時からの宣伝行動が中止になり、おかげで早く帰ってくることができました(笑。本当は喜んではいけないのですが)。

画像 岩波文庫の『防雪林・不在地主』の島村先生の「解説」を読みました。注目すべき解説です。これだけの少ない字数で、「防雪林」をどう読み、どう位置付けるのか、多喜二の成長過程の「地点」とその後を考える上での視点なども盛り込まれています。もちろん、字数の関係ですべてを分析(「析々帳」の紹介もあり)できるはずもありませんが、興味深く読ませてくれます。

 しかし本来この二作品は、題材にこそ共通性を持つものの、小説の方法や構造や大きく異なったものであり、単一の基準をもってその優劣を測るようなものではない。

 そのとおりだと思いますし、このことを多喜二の時間的な思考過程(成長過程)から深めようとする視点は、多喜二の「防雪林」執筆意図と、なぜ「未発表」にしたのかに迫っています。
 そして、多喜二があくまでも「人間」にこだわり、「汎愛思想」と「超人思想」問題を考える手掛かりを示しています。また、「若い世代の登場人物」を「新しいタイプの人間」として、時代の必然的に生じざるを得ない問題を、深いところから捉えようとしているところは注目です。

 多喜二にとって、「防雪林」は、「汎愛思想」と「超人思想」から卒業するためにどうしても書き残しておかなければならない「卒業小説」だったのかもしれません。「防雪林」を書くことによって、これまでの仕上げをしたのだと思ってしまいます。
 「救い」を出せばうそになる、「団結」をいうマルクスはかわいい。(原点にあたってないので、不正確な言葉ですが)と言った多喜二が、「一九二八年三月一五日」「蟹工船」を執筆する前にどうしても書き残したい小説として書いたと想定して読むと、「防雪林」は優れた作品として浮かび上がってきます。

 「団結だ!団結だ!一人残らず団結だ!」
 百姓の二、三人は、先生の使う「団結」という聞き覚えた言葉を使って、叫んだ。
(120ページ)

 「救い」を叫ぶだけの「汎愛思想」でもいけない、言葉だけの「団結」ではいけない、熱情にかられただけの「超人思想」だけでもいけない。
 それだけでは、「まだ足りねえぞ、畜生!」、ということになるんですよね。多喜二は、そのことを心の底からぶつけたかったのではないでしょうか。

 社会的には「アカ」とひと括りに評される人たちが、それぞれ個性を持ち、ひと括りにはできない様々な人間の集まりであることを描いた「一九二八年三月一五日」(ただそれだけでないのは言うまでもありません)、バラバラの「人間」グループが「団結」するに至る「蟹工船」(同前)、を書くに至った多喜二の思考過程を想像すれば、多喜二が到達し、強調した「団結」の中身が浮かび上がってくるのではないでしょうか。

 それぞれに個性を持ち、それぞれにバラバラな人生過程を過ごした人びとが、やむにやまれぬ状況の下で、文字通り損得抜きの「団結」力を認識することの重要性をどう小説に描くのか、多喜二の新しい出発点であり通過点だったのが「防雪林」だったと考えると、この作品の意義は変わってくるかもしれません。

 「団結だ!団結だ!一人残らず団結だ!」

 私たちは、言葉だけで「団結」を叫び、言葉だけで「連帯」を叫んではいけません。語ってはいけません。なにゆえに「団結」が必要なのか、「連帯」が必要なのか、そのことをしっかりと認識したうえで、そのことを行動に移すことこそが、もっとも求められているのではないでしょうか。

 私には多喜二の腹の底からの叫びが聞こえてくるような気がします。

 「団結」「連帯」を言葉だでけでいうな!
 
 なぜ、「団結」や「連帯」が必要なのか。そのことの真の意味と内容と重要性を知って、身体ごとでぶつかれ、と。

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コメント(3件)

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未来さん、「解説」のレビュー、ありがとうございます。丁寧に分析していただいたうえで、「団結」「連帯」の真意を語っていただいていると感じながら読ませていただきました。丁度今日授業でここをやったのですが、学生たちも「防雪林」を多喜二が何故書かなければならなかったか、何故未発表のままに止めたのかの話を聞いて、納得していました。
Prof. Shima
2010/04/28 00:08
本書で「防雪林」を久々に読んだのですが、現実の運動の中で、言葉だけの「団結」でとどまっている場合があるのではないか、本当の「団結」「連帯」とはいかなるものか、などを考えさせられました。

「防雪林」執筆時の多喜二には、内実を伴った仲間との「団結」の大切さを言葉だけでなく、身体ごとでつかみ取っていたはずです。
だからこそ、「一九二八年三月一五日」という優れた作品を書き上げることができたのだと思います。

島村先生が、「単一の基準をもってその優劣を測るようなものではない」という点に同感です。
もっともっと私たちがいまも考えなければならない問題が含まれているように思います。
未来
2010/04/28 20:39
 多喜二の年譜(『シネマフロント36号』)によれば、
 1927年12月 「防雪林」起稿
 1928年 2月 第1回普通選挙
       3月 3.15事件
       4月 「防雪林」完成
       5月 「戦旗」創刊
           上京し、蔵原惟人を訪問
          「1928年3月15日」を起稿
       8月 「1928年3月15日」完成
       9月 「東倶知安行」完成
      10月 「防雪林」改稿に着手するが中止
          「蟹工船」起稿
 1929年 3月 「蟹工船」完成
       4月 4.16事件
       7月 「不在地主」起稿
       9月 「不在地主」完成

 わずか2年の間に、代表作が次々と執筆されたことに驚嘆します。日本が大陸への侵略戦争を開始する助走の時代を、多喜二は鋭く感じ取って小説に凄い情熱を傾けたのですね。

          
御影暢雄
2010/04/28 22:46

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