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zoom RSS アンリ・バルビュス『地獄』 「闇があるから光がある」

<<   作成日時 : 2009/08/24 05:35   >>

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 ブログ「21世紀の小林多喜二への手紙。」に、御影暢雄さんがアンリ・バルビュス『地獄』についてコメントを書かれています。多喜二がタキちゃんに送った「闇があるから光がある」の言葉とも関係する作品です。
 http://blog.goo.ne.jp/takiji_2008/e/238eb28444c2dbd6988e17bbc29c1238

 以下、私が書いた『地獄』の書評を転載します。

「闇があるから光がある」
 神の存在は信じるが、教会の教理にうんざりする30歳の独身男性が、パリに定住しようとやってきた。パリに到着し、旅館暮らしを始める。
 その旅館の部屋の壁に一つの穴があった。隣りの部屋からは気づかれずに隣を覗き見できる穴。この穴から、人間の欲望と孤独を覗き見る生活が始まる。まるで好奇小説、それも女性の裸、男女の肉欲を覗き見るところが続くため、猥褻小説かと思うほどである。
 男女の肉欲と愛の欺瞞を見続けた主人公の覗き見が、一転して人間の本質を捉えようとする視点へと変わっていく。

 「ぼくらが喜びと光とをつくりだすために、悲しみと闇とが必要ではないかどうか、誰が知っているかね」
 「闇がなくても光はありますわ」
 「いや」
  ・・・
 「闇が神の光をさえぎるから、闇から逃れたいと、願うのだ」「朝から晩まで戦わなければならない労働。それも年をとって力が尽きはてたときに、一握りの金をつかんでいるためにすぎないが、その金も廃墟の山のようにあえなく崩れさってしまう」
 「そして、疲労が、われわれをみにくくし、顔から微笑を追いはらい、夕方には、切実な休息のまぼろしで、家庭の団欒をほとんど荒廃に帰する!」
 ・・・
 「いまこうして生きているままで、こうして苦しんでいるままで、幸福になりたいのです」

 ある男と女の会話の一部である。生きている間に幸福になることが不可能な現実を知り尽くした人間の叫びと諦めの言葉でもある。
 著者は、だから「人間は孤独である」、それが「真実」だと言いたいのだ。

 この小説には、人間の欲望と肉欲、愛と欺瞞、生と死を描くことによって、「人間は孤独である」ことを何度も強調している。教会の教理の欺瞞を批判し、社会への批判も含まれてはいるが、そこで著者の考えは止まっている。
 著者がその後『クラルテ』などを著し、平和運動を率先して進めたことを考えるとき、この小説からその予兆を見ることは困難かもしれない。
 しかし、「孤独」という人間の意識が、今日再び社会問題となっている。今日の青年を中心としたニートなどの社会的現象を一面的に分析すれば、「人間は孤独である」ということになってしまいそうである。
 そこから一歩進め、光を求めるために人間には何ができるのか、いかにすべきかを問うべきであろう。

 「闇があるから光がある」

 日本でクラルテ運動を試みた小林多喜二が愛するタキに語った言葉である。
 アンリ・バルビュスはこの小説の執筆時点では光を求める視野を持ち得なかったようだ。しかし、その後のクラルテ運動、それに呼応した世界の平和運動は、いくたの弾圧と戦争の惨禍に見舞われながらも前進しているのではなかろうか。

2006-01-19 / 未来

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コメント(2件)

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なるほど。
佐藤
2009/08/24 07:13
「地獄」のご紹介、有難うございます。フランスの文学・哲学は、戦前から戦後のある時期まで、日本の文壇・思想運動に大きな影響を与えていたと思うのですが、JPサルトルのベトナム戦争反対運動以降、関係が希薄になったような印象を抱いています。逆に今後,日本の革新的な文学・思想運動が高まれば、フランスとの交流が活発になるのかも。(カナダの青年が恵まれているという話を以前、書きましたが、これはフランスとカナダの深い関係が背景にあると思います。)
御影暢雄
2009/08/24 22:04

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