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zoom RSS 『治安維持法小史』/奥平 康弘/岩波現代文庫

<<   作成日時 : 2006/06/22 05:09   >>

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「共謀罪」が治安維持法の再来と危惧される理由

 治安維持法よる弾圧や拷問、特高の実態や犠牲者などの実態を研究した書はかなり出版されている。しかし、法制度の視点から治安維持法を包括的に分析した書は少ない。
 本書は、「小史」と名乗りながら、治安維持法の制定前から廃止に至る歴史を、法制面から分析した稀有な書である。1977年10月刊行の文庫版化ではあるが、「共謀罪」が継続審議となった今日、「稀代の悪法」と言われた治安維持法を知るためにもタイムリーな出版だろう。

 著者は、世間では『治安維持法』というと1925年に制定されて以来、一本の線をまっしぐらに悪法たる性格を進んだと思われがちだが、それは事実を反映していない、という。そして、治安維持法の準備期から、数度にわたる改悪を追いながら、その歴史的史実と本質を分析する。

 その歴史には1920年12月、「日本社会主義同盟」の結成や1921年国際コミンテルンと日本国内組織の連携、社会主義思想の国内への広がりとの関係がある。政府は1922年2月「過激社会運動取締法案」を提出したが、野党やマスコミの反対によって廃案となった。ここで、野党が法案の趣旨には反対ではなく、普通選挙制度要求などの絡みなどから反対したことが注目される。今日、「共謀罪」を民主党案を丸呑みしてまで成立させようとした自民党と民主党の駆け引きを考える時、まるで同じ論理が成り立っているように思われる。

 ところが、1925年「治安維持法」はスムーズに可決された。この国会では「普通選挙法」と「治安維持法」がセットで可決されていることに注目される。
 そして、最初に治安維持法が適用された事件が京都学連事件で、その適用根拠が「協議」であったことは、「共謀罪」を考えるうえで重要である。

 治安維持法が本格的に適用されたのは1928年3月15日、いわゆる3・15事件であった。これは同年2月の普通選挙前から準備されていた弾圧事件であった。
 この準備された3・15事件を仕立て上げることによって、治安維持法の改悪を、緊急勅令という当時の法体系からも異常な形式によって強行実施したのである。

 それ以後、法よりも拡張解釈や恣意的な運用で猛威を振るうこととなった。そして、1933年、1941年の改悪によって、政府に都合の悪いものをことごとく取り締まる法へと変化し続けたのである。
 本書では、本書の性格上、治安維持法による拷問や虐殺、犠牲をほとんど記述していないが、いかに治安維持法が悪法であり、その法成立前の言い分がいかに政府の都合によって変化させられたかを明らかにしている。

 民主党案を丸呑みしてまで「共謀罪」を成立させようとした自民党の腹のうちを考えれば、治安維持法の再来といわれることが、まったく的外れでないということが伺われる。
 秋の国会までに、これらの史実と「共謀罪」の真の狙いを人々に知らしめることが重要である。本書は、そのうえで重要な視点を示してくれる。

2006-06-21 REVIEW JAPAN投稿 未来

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コメント(2件)

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「3・15事件」という記号的な名称はふさわしくないように思う。「3・15弾圧事件」と呼ぶほうがいいのでは。
そうしないと、誰がだれに向かって暴虐をおこなったかという核心をぼやかすことになると思う。そして28年3・15事件だけではなく、29年「4・16弾圧事件」「32年春の文化関係者弾圧事件」「33年2月多喜二虐殺事件」と続く太い線を位置づけることになる。最低でも「5・15事件」「2・26事件」とは異なる位置づけの名称が必要だと思う。
takahashi
2006/06/22 08:44
 ご指摘のとおりだと思います。ただ書評という性格上、著者の視点に添ったために説明が不足してしまいました。
 著者は「法制面から分析」するために弾圧する側の視点から本書を書いています。「誰がだれに向かって暴虐をおこなったかという」問題ではなく、支配者はいかに弾圧し思想を取り締まるか、そのことに執心した事実を分析しています。
 それを伝えたくて、「いわゆる3・15事件」という著者の表現を活かし、それが「弾圧事件であった」と記しているところを読み取っていただきたいと思います。
未来
2006/06/22 20:44

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