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zoom RSS 『天皇の玉音放送』/小森 陽一/五月書房

<<   作成日時 : 2006/06/18 11:10   >>

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「ウソとホントの二重構造のトリックを暴く」

 「堪え難きを堪え忍び難きを忍び・・・」、1945年8月15日の天皇の玉音放送の一節、テレビなどで繰り返し聞かされ続けている天皇の肉声による「終戦の詔書」の一節である。
 ポツダム宣言を受諾し、無条件降伏を決断した天皇の英断として、昭和天皇を平和主義者だったとする言説さえある。戦争を終わらせる「力」を持つ天皇が、開戦を決める時には「力」がなかったなどという言説がまかりとおるところに、この国の曖昧さ、悲劇があるのかもしれない。

 著者は、この「終戦の詔書」から「人間宣言」といわれる詔書の内容を分析しながら、現在の歴史認識にもつながるウソとホントの二重構造によるトリックを明らかにする。

 「終戦の詔書」は、日本が起こした戦争の責任を認め、降伏することを宣言したのだろうか。ポツダム宣言の受諾は「米英支蘇四国」に行われているのに、この詔書には「米英二国に宣戦」したことしかふれられていない。中国への戦争については口を閉ざしているのだ。
 さらに、米英への宣戦も「自存と東亜の安定」のためであり「朕が志にあらず」と、「自存」自衛の戦争であり中国への侵略から始まった非を認めないばかりか、天皇自身の責任を逃れようとする卑劣な内容なのである。結局は「国体」天皇制を維持するための宣言であった。

 次に「人間宣言」といわれる「新日本建設に関する詔書」は、本当に民主的な趣旨を語った「人間宣言」なのだろうか。この文章の巧妙なトリックに「五箇条の誓文」の引用が隠されていることを著者は指摘している。
 「五箇条の誓文」5番目の項目に「智識を世界に求め大に皇基を振起すへし」とあるが、ここに「天皇が国家を統治することが宣言されている」のである。この冒頭に記載された「五箇条の誓文」の導入によるその後の文脈こそが、「これから『建設』されるところの『新日本』とは、とりもなおさずヒロヒトが統治する国家」を示しているのである。

 結局、「終戦の詔書」でヒロヒトは責任逃れに終始し、「新日本建設に関する詔書」で国体の護持を宣言したのである。
 また、昭和天皇ヒロヒトがマッカーサーに戦争の「全責任」を負ったという言説があるが、その事実はまったく存在が確認されておらず、天皇を平和主義者にしたいと願う者の願望でしかないことを明らかにしている。

 字数の制限があり、これ以上本書の内容を紹介できないが、現在の歴史認識をめぐる論争の出発点に「終戦の詔書」があることを著者は明らかにするとともに、事実を認めることの重要性を強調している。
 憲法を改悪しようとする人たちの歴史認識は事実を認めないところからはじまっているだけではない。民主主義さえも認めようとしない根本的な欠陥があることも知る必要があるだろう。そんな人たちに都合のよい憲法にさせてはならない。

2006-06-17 REVIEW JAPAN投稿 未来

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
玉音放送については、あの抑揚のある語り口しか知らなくて、ほとんどその一字一句については、知らなかったので、これを機会に勉強したいと思います。
めい
2006/06/20 19:24
REVIEW JAPANに投稿した内容をそのまま写しただけなので、本書のすべてに言及していませんが、新しい発見がたくさんありました。今日を考えるうえで貴重な分析をしています。お薦めですよ。
未来
2006/06/20 20:45

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