未来 ― 私達の力で歴史を動かそう!

アクセスカウンタ

zoom RSS 『離れ部屋』/申 京淑/集英社/「韓国現代文学を代表する作家の自伝的小説」

<<   作成日時 : 2005/11/30 05:13   >>

トラックバック 1 / コメント 0

 韓国現代文学を代表する作家の自伝的小説。著者は「この作品は事実でもフィクションでもない、その中間くらいになったような気がする」という。しかし、自分を見つめ直すための作品であることは間違いない。

 16歳から19歳の4年間を著者は語ることができなかった。産業体の夜間部に通っていたという劣等感、親しい人の死との関わり。著者の心の中に閉じ込められていた時間。この時間の解放なしに、著者の心の解放がなかったのだろう。

 しかし、この作品を書くことによって、著者が語れない時間ではなく、著者を育んだ時間の一部であったことに気づく。語れなかった時間に接した人々を想い出す。
 「彼女たちが私の内面に広げてくれた、社会的な意志を忘れないだろう。私の本質を生み落としてくれたオムマのように、匿名の彼女たちが、私の内面の片方を生み落としてくれたことを・・・・・そこでわたしもまた、自分の言葉を通して彼女たちが胸を張って過ごせる居場所を、世の中に新たに生み落としてやらねばならないことを・・・・・」

 1978年からの4年間、韓国は激動の社会。朴正熙大統領の射殺から全斗煥大統領就任。学生・市民による民主化運動とこれへの血塗られた弾圧、「浄化教育」を口実とした民衆の弾圧。
 著者は、この時代に社会を変化や民衆の動きを見ているようで見ていなかった。同時に見ていなかったようで見ていた。

 勤めた会社で結成された労働組合。夜学に行かしてもらうための組合脱退、ストライキに参加せず就労することに心を痛める。学生が民主化を求める政治活動に無関心に過ごした日々。

 著者はこの時間を見つめることにより、自分を見つけることができた。
 「この作品の中の愛と労働と希望と心の傷などが、みなさんの気持ちをいささかなりとも揺り動かすことができたらうれしく思います。揺り動かされることによって、自分でない他人の人生、自分の世界ばかりでない他人の世界に向けて心が開かれるならば、作家としてそれにも増して幸せなことではないでしょう」と「日本の読者のみなさんへ」で語っている。

 自分の世界ばかりでない他人の世界。これは結局他人の世界ではない。自分を取り巻く現実の世界なんだ。そんな著者の訴えが伝わってくる。余韻多い小説である。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
次回の旅ではこの小説の舞台めぐりをしようと思う
2006年9月10日午後4時ごろ、私は韓国の水原駅からソウルに向かう電車の切符を買った。1400W。日本円にすると180円くらい。ゼロをひとつ間違えてはいないだろうか。私は唖然とした。釜山から長い旅をして10日目、私はいつの間にかソウルにそんなにまで近づいていたというの... ...続きを見る
再出発日記
2006/11/01 00:05

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『離れ部屋』/申 京淑/集英社/「韓国現代文学を代表する作家の自伝的小説」 未来 ― 私達の力で歴史を動かそう!/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる