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zoom RSS 『ハックルベリー・フィンの冒険〈上・下〉』/マーク トウェイン/岩波文庫

<<   作成日時 : 2005/09/23 13:37   >>

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 マーク・トウェインといえばどの作品が有名なのだろうか。『トム・ソーヤーの冒険』『王子と乞食』は今も読まれているのだろうか。
 『トム・ソーヤーの冒険』では脇役だった浮浪児ハック。ハックが主人公になることによって、同じ『冒険』ものでありながら、空想から現実へと、大きな変化がおこった作品である。

 なぜ、いま『ハックルベリー・フィンの冒険』なのか。そのきっかけは池澤夏樹『世界文学を読みほどく』だった。奴隷制に対するマーク・トウェインの限界が論じられていた。正直言って二十数年前に読んだ時、この作品の奴隷制問題について深く考えた記憶がない。このことが、あらためて読む機会となった。

 岩波文庫の上巻の「はしがき」に「マーク・トウェインもハックと同様に、奴隷制度を是認する南部の白人の一人であって」「その問題が十分に解決しないままで作品が終わっているのは不徹底といいながら、やはり止むをえない面があったかもしれない」とある。私がこだわったのは、まさにこの点にあった。

 二十数年ぶりに読んだ感想は、冒険ものとして読んだ当時の読み方がいかに不十分だったか、という点に尽きるかもしれない。当時も、人間の思いやりや「正直」ということに感心した気がするが、この作品に描かれた社会の矛盾や、価値観が逆転さえするという問題提起を読み取ることはできなかった。

 19世紀アメリカ南部での「常識」「倫理」は、逃亡奴隷(本書では「ジム」)を見逃すことは「間違ったこと」で、持ち主に返すことが「正しいこと」とされていた。
 ハックは、この倫理に心の底から葛藤し、悩む。しかし、その結論は「かりに、正しいことをして、ジムを引き渡したとしたら、今よりいい気分になっていただろうか?そうはならねえ、いやな気分だろう」(上巻)というセリフの中に込められていると、私は読んだ。

 上巻だけでは、この作品の全体像は見えにくい。上下巻をいっきに読むことによって、全体像が浮かびあがってくる。マーク・トウェインは、この作品の執筆を何度も中断したといわれている。だからこそ、下巻を読まずに論評することはできないともいえる。

 迷信や栄誉、建て前や権威への徹底した揶揄。権威の象徴である王様こそ「悪党」の親玉といわんばかりの揶揄的批判に読者は自然に頷く。社会が良いとする「教会」や「倫理」というものが、いかにつくられたものであるかをハックは見抜いている。
 そのハックと逃亡奴隷ジムとの「冒険」こそ、社会の「表」と「裏」を暴いてやろうという現実的な問題が隠されているのでなかろうか。

 たしかに結末は、奴隷解放という結末は描かれていない。そして、作品の中で奴隷解放の必要性を声高に叫んではいない。しかし、奴隷制の問題点を浮き彫りにしようとする姿勢はあるのではなかろうか。

 もちろん、21世紀の「私の目」から見た希望であるかもしれない。しかし、これだけはいえるのではないか。「トム・ソーヤー」が空想的であるのに、「ハックルベリー・フィン」は現実的である。
 空想に満足せず、現実社会を描こうとした作者の意図は、21世紀にも読み継がれることで、その役割を果たしているのではないだろうか。

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