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zoom RSS 『サンダカン八番娼館』/山崎朋子/

<<   作成日時 : 2005/09/20 05:14   >>

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 からゆきさん、言葉として聞いたことがあるが、その実態を読むのは初めてである。からゆきさん、とは「唐人行」または「唐ん国行」という言葉がつづまったものだそうだ。

 著者は、これまでの女性史は、一部のエリート女性、たとえば福田英子や与謝野晶子、平塚雷鳥などの研究で終わり、底辺に生きた女性の研究が不十分だと考える。
 「底辺の女性たちの実態に迫り、その悲しみや喜びの核心をつかんだ史書でなければ、本当の女性史と評価できない」という。

 その一つの試みとして、からゆきさん、の実態に迫ろうとした体験談とも言えるのが、本書である。

 からゆきさんは、天草や島原に一番多いと言われている。開墾できる土地が少なく、雲仙岳の火山灰により土地もやせていて、貧しい暮らしを強いられていた。そのため家族のために、わが身を売った女性が多いと言われている。

 著者は、これまでに取材の対象になった女性の話を聞くのでは、本当の生の実態はつかめないと考え、無謀にも何のつてもなく天草に渡る。
 そこで偶然出会った70過ぎの老婆に、直感ともいうべき推理で付いて行くことになる。たどり着いて老婆の家は、あまりにもみすぼらしく、とても普通の人が暮らす家とはいえないありさま。
 誰も家の敷居を跨ごうともしない家で、著者は疲れから昼寝をすることにより、老婆の信頼を得る。

 ここからの展開は、読者の推測をはるかに超える物語へとつながっていく。著者は目的を告げることもなく老婆との共同生活を行い、サンダンカでの話を聞きだす。老婆は、著者の目的をうすうす感じ、著者への好意から話をしたのである。

 読みすすめていくうちに、取材のためなら嘘をつき、時には泥棒をする著者の神経に腹立たしく、怒りさえ感じた。目的のためなら手段を選ばぬ取材。こんなことがあってもいいのか!
 しかし、老婆はそのことを知りながら著者を許し、サンダンカの話をしたばかりか、著者に協力したのだ。老婆のそんな心境を知らなかった著者が、帰郷する前日老婆に真実を告げたあとの、老婆の言葉、態度に涙が溢れ出た。
 この感動は、ぜひこの本を読んでいただきたい。

 著者は、この取材を終えて、すぐにこの本を出版しなかった。躊躇と苦悩のすえ、数年立ってから出版する決意をした。
 その胸中を知らなければ、私は怒りを感じたかもしれない。しかし、著者の良心の一端を垣間見ることにより、この作品の値打ちを私も感じることができた。

 私の想いのすべてを、このレビューに語ることはできない。ぜひ読んで欲しい。そして、考えて欲しい。著者の主張に耳を傾けて欲しい。

2004-05-24

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