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zoom RSS 『風の地平』能島龍三

<<   作成日時 : 2005/07/17 08:57   >>

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 小学校の先生だった主人公は、軽度の障害のある一八、九歳の若者を教育し就学させるため山村での施設建設を実行しようとする先輩に共感し、学校を退職して山村の施設に行く。

 まるでユートピアの世界を造ろうとする先輩の理念のもと、無我夢中で働いてきた主人公に転機が訪れる。
 それは母からの手紙であった。

 ここからの心理描写、現実的な施設での事件、事件を通じての主人公の思考過程は見事である。前半はぎこちない文体や突然の場面展開に不自然さを感じたが、この手紙以降の小説は読むものを惹きつける。

 母からの手紙には「心を病んだ人を力ずくで幸せになど決してできないように、知恵の遅れた人を叩いて、その人たちにどんな幸せを与えられるというのか」と施設の方針に意見を述べていた。
 この母の手紙に主人公の心は揺れ、本当の教育とは何かを考え続ける。

 施設の責任者の理念は、我慢強い忍耐力をつけること。その方法と根底にある考え方に主人公は疑問を感じ始める。園生は「厳しい指導に合わせて先生向きの顔を作っているだけ」との現実に、「人間はどう生きたらいいのか」を考えるようになる。

 「学ぶということは誠実を胸に刻むことであり、教えるというのは、共に未来を語ること」
 「言われたことを素直に聞いて我慢して働くこと、それが人間の幸せなのか」「我慢と辛抱を教えて、企業の設定した仕事の枠からはみ出さないようにすること、そんなことを教育と呼ぶことができるのか」

 言葉だけが書かれているだけではない。人の生きる姿を描きながら、自然に出てくる感情、理性が描かれている。
 現実に合わせることのできる人をつくることが教育の役割ではなく、自分で考え行動する力を培うことが教育である。

 現実に合わせるのではなく、人の幸せに合わせて社会を変えることこそ必要なのだ。
 主人公は、ユートピアは現実を変えることでこそ実現できると気づき、この施設を退職し障害者運動の現実に飛び込んでいく。

 いい小説を読んだ。読後感も最高だ。一読を薦めたい。

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