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zoom RSS 『となり町戦争』/三崎亜記/集英社/「悲しくなるほど人を見つめた小説、ぜひ読んで欲しい!」

<<   作成日時 : 2005/06/03 04:50   >>

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 とても悲しい読後感。なのに考えずにはいられない読後感。そして、これほど一読をお薦めしたい作品も近年珍しい。
 いくつかのレビューや書評を読んだが、この小説の核心を描ききった書評はいまだにお目にかからない。それほど、奥深い小説であり、読むものの心に波紋を巻き起こす内容である。

 いつもどおりの日常。そう、何も変わらない生活なのに、戦争が起こったという。それも、隣り町との戦争。しかし、どこにも戦争の影響はない。どこにも戦争の気配はない。なのに、広報には戦死者の人数が記載される。

 不思議な小説である。不思議な展開である。戦争が起こったというのに、どこにも戦争など起こっていない。そして、日々の暮らしが何の変化もなく続けられる。
 変わったことと言えば、役所からの偵察業務の任命通知。この展開さえ何が起こったのか、通知を受けた者にさえわからないもの。

 ああ、人間の想像力の欠如をこれほど揶揄的に描く小説があらわれるなんて・・・。あまりにも悲しい。イラク戦争の惨劇をニュースの報道で見ても、人の死を実感として感じられない日本人。邦人が殺害された時だけ、人の死を伝えようとするジャーナリズム。戦争で人が殺される想像力や痛みさえ失われつつある現代人。

 この小説は、そんな社会批判を具体的にしているわけではない。なのに人の想像力の欠如の行き着く先を描いている。そこにこの小説の悲しさとリアルさがある。リアルな戦争はどこにも描かれていない。なのに社会の、人の、現代のリアルな現実を描いている。

 役所が、戦争も土木工事も、同じ業務の一環としてたんたんと遂行するさまの描写は、今日の政治・行政への痛烈な批判を含んでいる。そして、職務を遂行するだけが仕事と考える役人の無思考の愚かさが悲しい。そんな役人ばかりではないが。

 今の現象をこれほどリアルに描いた小説は珍しく、悲しいほどに評価したい。しかし、偽装結婚をした役所の女性が、偽装結婚相手と業務としてセックスをするという設定には納得できない。いくらなんでも、それほど人間を悲しいものとは思いたくはない。
 最終章で、「逢いたい」という男性の言葉に駆けつけた女性に安堵した。「ああ、人間らしさもちゃんと描写されている」と思ったが。しかし、それもつかの間・・・。

 新鮮な小説であり、一読をお薦めするが、人を愚かに描きすぎている点があることも指摘しておきたい。

2005-04-29 REVIEW JAPAN 投稿

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