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zoom RSS 松川事件と広津和郎『』/木下英夫/同時代社/「真実が人を動かすとき」

<<   作成日時 : 2005/06/11 05:41   >>

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 広津和郎の作品は読んだことがない。しかし、昨年、広津和郎の文学が見直されていい、というような評論を読んだ。たまたま目にしたのが、この『松川事件と広津和郎』であった。広津和郎とは?という興味と、松川事件というものに惹かれ本書を手に取った。

 松川事件とは?「下山事件、三鷹事件」「松川事件も含め、アメリカ軍占領下でおこった謎の事件としていまだにその真相は明らかになっていない」。第一審判決で死刑5名、無期懲役5名、有期懲役10名であった。それがすべて無罪となった事件である。

 広津和郎は、一審判決を受けた被告の手記を読んで「無実」を確信したという。「あ、あの事件は全くひどい。無茶だ。あの被告たちは可哀そうだ」と語ったという。
 そして、代表者になることを極度に避けた広津和郎は「松川運動」の代表者として裁判批判の論戦の先頭に立つ。

 広津和郎の、松川事件における裁判批判の論点は鋭く、判決書の矛盾をことごとく露呈している。著者の思い入れに思わず唸ってしまう。
 いかに裁判官が権力の圧力に屈し、被告を犯人に仕立て上げようとした判決であるかが明白となっている。

 本書は、松川事件になぜ広津和郎が全身全霊をかけたかを問おうととして、広津和郎の大正時代から戦前、戦中、戦後の文芸批評、小説の分析に多くをさいている。
 文芸批評の分析には成功していると感じるが、小説の分析には退屈と拙さを感じてしまう。著者が哲学を専攻している関係なのか?

 しかし、最終章の「松川事件と思想の問題」には感心した。著者のいう、哲学と思想の区別の問題提起には、考えさせられる点がある。問題提起の段階で終わっているような気がするが・・・。
 それでも、なぜ広津和郎が思想・信条の違いを超えた運動となった松川運動に関わったのか、著者の問題意識が明確に示された優れた論点をもっていると考える。

 小説の分析には、いささかウンザリしたが、読んで良かったといえる作品である。

2004-01-06 REVIEW JAPAN 投稿

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コメント(2件)

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広津和郎の心を動かした松川事件の被告の手記『真実は壁を透して』の刊行に尽力したが、小林多喜二とともにプロレタリア文学運動に挺身した松田解子さんでした(『ウィキペデア(Wikipedia)』より)。そしてこの広津和郎を支援したのが、多喜二が敬愛していた志賀直哉――この三人の出会いは偶然と思えてしまいがちだけれど、ある意味では、必然だったと思えます。

Takahashi
2006/05/14 21:37
 必然と偶然、一人の個人から多くの人々、この人々を動かす動機、この動機が共通のものになり、運動になったとき、社会と歴史を動かす力になるのですね。
 小林多喜二と志賀直哉、松田解子、広津和郎。人間の出会いと影響は興味深いですね。
未来
2006/05/15 05:00

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